経済産業省の関連団体が15日、愛知県沖で始めたメタンハイドレートの掘削試験が、
思わぬ形で注視されています。
掘削する南海トラフでは過去にマグニチュード(M)9クラスの
大地震が起こっており、専門家は海底開発が地震を誘発する危険性について
警告しております。
日本をエネルギー大国へ導くはずの新資源には意外な盲点があるようです。
メタンハイドレートは、メタンガスと水による氷状の結晶で「燃える氷」とも呼ばれておりますが
日本近海に多く埋蔵され、発電用の次世代エネルギーとして注目されています。
現在のところ、世界中のどこの国でも商業化は実現していません。
そこで経産省が独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に委託。
探査船「ちきゅう」を使い埋蔵量が多いとみられる海域で掘削試験を実施することになった。
先端にドリルを装着したパイプで井戸を掘り、来年1月ごろにメタンガスを海上に取り出す見通し。
問題は掘る場所だ。愛知県渥美半島の南方沖70~80キロは東部南海トラフと呼ばれる海域。
南海トラフは西日本などが乗ったユーラシアプレートの下に、南からフィリピン海プレートが
年数センチずつ潜り込んでいる場所を指します。
静岡県の御前崎沖から高知県の足摺岬沖まで、総延長は約670キロに及びます。
南海トラフでは過去に大地震が多発した。代表例は1707年の宝永地震。東海、東南海、南海の
連動型で、これまでの研究で規模はM8・4~8・9といわれたが、
最近ではM9・1~9・3だったとする説を静岡大の石川有三客員教授が発表している。
ほかにもM7級の東海、東南海、南海の各地震がたびたび起こってきた。
武蔵野学院大特任教授の島村英紀氏(地震学)は、「人造地震」の危険性を指摘する。
「掘削が直接、大地震を引き起こすことはまずない。しかし、すでに蓄積された地震エネルギーを
刺激し、誘発することはあり得る。80年も地震がなかった米コロラド州では1962年、
圧力をかけた地中への廃水処理が地震を頻発させた。2004年の新潟中越地震は天然ガス田での
作業が引き金を引いたという説もある。南海トラフは大津波をともなう地震を起こす場所だけに、
慎重に検証すべきだろう」
宝永地震では最大25メートル超の大津波が発生した。政府の中央防災会議は宝永地震と
同じような地震が発生すると、死者は2万5000人を上回ると想定している。
こんな震災を海底開発が誘発するのは、たまったものではない。
メタンハイドレート開発を管轄する経産省の資源エネルギー庁は、
「今回の試掘は水深1000メートル程度の海底面を300メートルほど掘り進めるもの。
大きな地震は深さ10キロ以上で起こるため、地震を発生させるとは思っていない」
(石油・天然ガス課)と強調した。
しかし、掘削試験が成功すれば、将来的には大規模な開発が行われることになる。
前出の島村氏は「あらゆる危険性を想定して、自然に影響を与えない方法を考えるべき。
福島第1原発事故は『エネルギーありき』の姿勢が招いたが、その反省がない」と苦言を呈した。
発電用のエネルギーを確保することは重要だが、慎重な調査も必要のようです。。