大地震の際に超高層ビルをゆっくりと揺らす「長周期地震動」と呼ばれる揺れに
ビルがどの程度耐えられるかを調べるため、鉄骨で造った大型のビルの模型を
壊れるまで揺らす初めての実験が兵庫県で行われました。
南海トラフの巨大地震で想定される揺れで、超高層ビルは天井や壁が
大きく崩れ落ちる可能性があることが分かりました。
実験は、独立行政法人の防災科学技術研究所と大手建設会社などで作る
研究グループが兵庫県三木市にある震動実験施設「E-ディフェンス」で行いました。
実験に使ったビルの模型は高さおよそ25メートルの鉄骨造りで、
20階建て程度の高さ75メートルの超高層ビルに相当します。
実験ではまず、マグニチュード9クラスの南海トラフの巨大地震が発生した場合に
東京や大阪などで想定される揺れを入力しました。
耐震基準の2倍余りの強さの揺れです。
その結果、長周期地震動の揺れで最上階の水平方向の揺れ幅は61.6センチ、
20階建てのビルの最上階で揺れ幅がおよそ1メートル80センチに相当する
揺れになりましたが、ビルが倒壊することはありませんでした。
しかし、中ほどの階を中心に柱と梁のゆがみが耐震基準の2倍近くになるなど
多くの階で天井や壁が崩れ落ちる可能性があることが分かりました。
その後、耐震基準の3倍の揺れでビルを揺らしたところ、
2階など複数の階の柱と梁の接合部が壊れました。
さらに、基準の4倍から5倍を超える揺れで繰り返し揺らした結果、
低層階の変形が次第に大きくなり5回目の揺れで倒壊しました。
柱が傾くことでビルの重さを支えきれなくなり倒壊につながったということです。
超高層ビルが壊れていく様子を実験で確かめたのは初めてで、研究グループは、
天井や壁が崩落しない対策や補強方法を検討するほか、ビルの安全性を速やかに
調べる技術開発を進めることにしています。
東日本大震災時には、新宿にある損保ジャパンの本社ビルや隣の野村ビルが
大きく揺れている様子が分かる動画がインターネット上にアップされていました。
あの揺れを見ると確かに恐ろしくなります。
日本の構造設計は、他の国に比べてもかなり安全に設計されているけれども
長周期地震による揺れとなると、想定を超えてしまう事もあるかもしれません。
高層ビルや高層マンションにお住まいの方は、このような揺れにも
備えておく必要があるかもしれません。