兵庫・大阪府県境の左門殿(さもんど)川の堤防が、南海トラフ巨大地震によって、
大阪府側では「揺れの直後に決壊する」、兵庫県側では「持ちこたえる」とされ、
川を挟んで避難啓発に温度差が出ているようです。
一帯は海抜ゼロメートル地帯で、大阪府は相当数の人的被害を想定に盛り込み、
迅速な避難を呼び掛けています。
兵庫県は「堤防の大部分は補強済み」と説明し、特別な啓発はしていません。
全く同じ場所なのにもかかわらず、こうも違うというのはどういう事なのでしょうか。
大阪府が昨年秋に発表した南海トラフ巨大地震による被害想定では、
同川などの堤防が液状化によって崩れ、10分以内に30センチ以上の浸水が始まり、
最悪の場合、死者は大阪市西淀川区で約1万3千人に上るとされています。
同川の堤防は、兵庫側7・3メートル、大阪側8メートルで、ともに鋼鉄の矢板を
打ち込んで護岸を造る「矢板式」が多い。
しかし、兵庫県が昨年末に発表した浸水想定では、堤防は液状化で多少沈下するが
決壊はせず、揺れの117分後に到来する4メートルの津波も防ぐとされています。
最大の違いは、堤防の沈下量解析の方法のようです。
大阪府は簡易な「チャート式」では「決壊しない」との診断でしたが、
さらに精密な「動的解析」を行った結果、液状化で矢板が前方に大きくずれ、
崩れた部分から浸水することが分かりました。
一方、兵庫県はチャート式のみ。
現在、堤防補強対策の一環で動的解析を進めるようですが、
河口3・5キロより上流の堤防は「決壊」と判定される可能性があります。
行政ごとでもこうも変わってきてしまうと、その周辺に住んでいる方にとって
どちらを信じていいのかという事もあるかもしれません。
過剰と捉えるか、想定内と捉えるか。
最終的には、個人の判断によるかもしれません。